[力学] てこ 上下の力のつりあい 【動画No.5-6】

 てこの計算問題を解く際に使用する道具は、じつはモーメントのつりあいの式だけではありません。ついつい忘れがちなのが上下の力のつりあいの式であり、問題を解く上でのキーポイント(決め手)になることも少なくありません。今回はそれに関連して力の矢印の有用性についても話していきます。

No.5 上下の力のつりあい ※7分33秒の動画です

 てこの計算問題でよく出題される『上向きの力』によるモーメント。前回のばねはかりに引き続き、今回は台はかりが登場です。動画内でも話しているとおり、じつはばねはかりで上向きに引っ張っている場合と本質はまったく同じです。なので理屈の上では、ばねはかり問題を解く力があれば台はかり問題も難なく解きこなせるはず…。
 しかし実際は台はかり問題を苦手とする生徒がとてつもなく多いのです。類題なのに見た目が変わった途端に解けなくなってしまうという"勉強あるある"の典型例ですね。では、どのようにすれば台はかり問題をスムーズに習得できるのでしょうか。

 1つの方法としては、ばねはかり問題を習得した後はすぐ(できるだけ時間を空けず)台はかり問題の演習に入ることです。ばねはかりから台はかりへと速やかに移行し、この両者の間に難易度の差や解き方のちがい等は全く無いということを、演習をとおして実感してもらうことが大切です。
 それ以外の方法でオススメなのが力の矢印を用いることです。力の矢印を図に書き入れることで、ばねはかりの役割と台はかりの役割が本質的に同じであるということを視覚的に理解しやすくなります。これがどれほど効果的なのかについては、次の動画(No.6)をごらんいただいた後にくわしく述べようと思います。

No.6 上下の力のつりあい② ※6分52秒の動画です

 次の2つの図を見比べてみて下さい。左の図は、動画内でそのまま使用している演習問題。一方、右の図も同じ問題ですが、台はかりなどの役割を力の矢印にして表したものになっています。

 いかがでしょう。右の図のほうが解きやすそうに見えるのではないでしょうか。それは、問題を解くのに必要な要素だけが書かれたシンプルな図になっているからです。てこの主役はあくまで棒であって台はかりやばねはかりではありません。台はかりなどは棒に力を及ぼすだけの存在として扱えばいいので、力の矢印で表してやれば十分なのです。

 次に紹介する2つの図。これらはじつは力学的には全く同じ図であり、なおかつ上の演習問題と同じ図でもあるのですが、この事実にすぐ気づける人はなかなかの上級者だと思います。

 どうでしょうか。ぼんやりながめているだけだと、なかなか同じ図には見えてこないと思います。そこで、図に"ひと手間"を加えてあげましょう。台はかりなどをすべて力の矢印に置き換えると次のようになります。

 いかがでしょう。共通点が浮きぼりになったのではないでしょうか。このような図であれば、だれもが視覚的に納得できると思います。ただでさえ台はかりは視覚的に存在感が大きく、周囲よりも目立ってしまいがち。そのような"悪目立ち"するものを力の矢印に置き換えるだけで、格段にシンプルな図にすることができるのです。

 じつは、てこに限らず滑車や浮力などの単元でも力の矢印は活やくしてくれます。なので、できるだけ早いうちに図中に力の矢印を書き入れるという習慣を身につけてもらいたいところなのですが、その"ひと手間"を嫌がる生徒もいます。あまり無理強いをしても逆効果になるだけですから、まずは力の矢印の有用性について知ってもらうことが大切です。力の矢印による視覚効果がいかに大きいか。台はかり問題でつまずいたときこそ、それを知る絶好のチャンスと言えるでしょう。

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