てこ計算で多くの生徒がつまずくテーマと言えば、その1つはこの"棒の重さ"でしょう。たしかに、ここをマスターするには多少の慣れが必要ではあります。ですが、難解なテーマなのかと言うと全くそんなことはありません。
No.7 棒の重さ① ※6分58秒の動画です
棒の重さが登場することで何が変わるのかと言うと、それはおもりが1つ増えるということだけであって、解き方そのものは今までと全く変わりません。ここでつまずく場合、大抵は“棒の重さのおもり”を正しく書き足していないことが原因です。その手作業さえ怠らなければ、自力で解決できるような問題が案外多いことに気づくと思います。
No.8 棒の重さ② ※6分53秒の動画です
問題が複雑化してくると、ついつい棒の重さの存在を忘れたまま計算して不正解になってしまう生徒が多くなります。そのたびに周囲が「もう忘れちゃダメだよ」と注意をし、生徒自身も「今度からは忘れないようにしよう」と反省をするのですが、具体的な解決策になっていない為あまり効果がありません。
複雑な問題の場合、棒の重さ以外にも考えねばならない要素(条件や設定)がいくつも存在しますから、あれこれ考えているうちにどうしても棒の重さから意識がそれてしまいます。そして、そのまま計算式を立てようとすると、棒の重さを計算に含めることを忘れてゲームオーバーになってしまうというわけです。
ですから、問題を解き始めるときにまずは最優先で"棒の重さのおもり"を図中に書き入れることが何よりも大切です。そうしておけば、図をながめるたびに棒の重さに意識が向くので、棒の重さの存在を忘れてしまうなんてことはなくなります。
まずは与えられた条件をすべて図に書き加える。あれこれ考えるのはそのあとにしましょう。
No.9 棒の重さ③ ※6分29秒の動画です
最後に、おまけ問題を1つ。
(問)
重さがわからない、一様でない棒があります。この棒を図のようにして水平につりあわせたとき、ばねはかりが指し示す値は何gですか。ただし、棒の左端から25㎝の位置に、棒の重心があるものとします。
もちろん、答えは250g(=50g+200g)ではありません。棒の重さを計算にふくめていないので、これは間違いです。計算に入る前に、まずは棒の重さをおもりにして図に書き入れてやる必要があります。今回は棒の重心の位置が確定しているので、きょりのデータも書き入れることができます。そうすると次の図のようになり、あとはいつもどおりの計算を行うことで正しい答えが求まります。
[モーメントのつりあい]
50g×40㎝+?g×15㎝ = 200g×16㎝
これを解くと ?=80g
[上下の力のつりあい]
ばねはかりの値 = 50g+80g+200g = 330g
てこの問題を解く際は、まず最初に図を完成させることを目指しましょう。解き方などについて考えるのはそのあとです。条件などが全て書きこまれた図が出来あがれば、計算式はおのずと立つはずです。
問題で与えられている図は大抵”未完成な状態”であり、足りない情報(棒の重さなど)を自分で書き入れてやる必要がありますし、そもそも図が与えられていない場合は自分でイチから作図してやる必要があります。図を完成させていく工程は力学における条件整理のようなものであり、極めて大切な作業です。
てこ計算は「図が命!」。このあたりのレベルからは、自分でしっかり手作業を行えるかどうかが勝負どころになってきます。
コメント